自分に合うシャフトの選び方|「S」「R」の表示だけでは決まらない、しなり戻りという視点

シャフトを替えてみたい。でも、何を基準に選べばいいのか分からない——。
そう感じたとき、多くの方がまず見るのがフレックス(硬さ)の表示です。今使っているのが「S」だから次も「S」にしよう。ヘッドスピードが速くなってきたから、そろそろ硬くしたほうがいいだろうか。
もちろん硬さは重要な要素です。ただ、フィッティングを長く担当してきた人ほど、実はもっと手前の段階で別のところを見ています。それが、シャフトの「しなり戻り」がいつ起こるかという話です。
この記事では、浜松・四ツ池ゴルフガーデンの工房を担当する北川さんの視点から、シャフト選びで本当に見るべきポイントを解説します。北川さんは、ヤマハのフィッティングサービス「YPAS(ワイパス)」で約18年にわたり、フィッティングとクラブの組み立てを担当してきた人物です。
📋 目次
- なぜ「S」表示だけでは、自分に合うシャフトが決まらないのか
- フィッターが最初に見る「しなり戻りのタイミング」
- もうひとつの軸:フェースの返り方(ローテーション)
- ドライバーからアイアンまで、同じシャフトで揃えればいいわけではない
- 「差し加減」で構えたときの顔が変わる
- その見立てをしているのは、どういう人なのか
- 弾道は、99打席すべてに残っている
- スイングを見ているコーチが、同じ場所にいる
- 打って、直して、もう一度打てる
- よくある質問
- まとめ:シャフト選びは、消去法ではなく逆算で
なぜ「S」表示だけでは、自分に合うシャフトが決まらないのか
フレックス表示には、実は共通の規格がありません。
「R」「SR」「S」「X」といった表記は、あくまで各メーカーが自社の基準で付けているものです。そのため、A社の「S」とB社の「S」では、実際の硬さがまったく違うということが普通に起こります。同じ「S」を選んだつもりが、握った瞬間に「なんだかこれは違う」と感じるのは、気のせいではありません。
さらに厄介なのは、同じ硬さでも、しなり方はシャフトごとに違うという点です。
シャフトは単純に硬い・柔らかいだけの棒ではありません。どこがしなるのか(先調子・中調子・元調子)、どれくらいねじれるのか(トルク)、そしてスイングのどのタイミングでしなりが戻ってくるのか。これらが組み合わさって、そのシャフト固有の「振り感」が生まれます。
つまり、硬さの数値だけを頼りにシャフトを選ぶのは、靴を選ぶときにサイズだけを見て、足の甲の高さや幅を見ていないようなものなのです。

フィッターが最初に見る「しなり戻りのタイミング」
では、フィッティングの現場では何を見ているのか。北川さんが挙げるのが、しなり戻りのタイミングです。
ダウンスイングでシャフトはしなり、インパクトに向かってそのしなりが戻っていきます。この「戻る瞬間」が、人によって驚くほど違うのだといいます。
「しなりが解けるのが早い方は、インパクトの0.3秒前くらい。遅い人は0.1秒前まで解けないんです」
ダウンスイング自体が0.3秒前後の出来事であることを考えると、これは相当な差です。0.3秒前に解ける人は、ほとんどトップの直後からしなりが戻り始めているということになります。一方、0.1秒前まで解けない人は、インパクト直前まで力をためたまま振り下ろしていることになります。
この違いは、そのままシャフト選びに直結します。
- 早く解けるタイプ:インパクトを迎える頃には、しなり戻りがすでに終わっている。しなりが大きすぎるシャフトだと、戻りきったあとにさらに動いてしまい、タイミングが合わなくなりやすい
- 遅くまで解けないタイプ:インパクト直前まで負荷がかかり続ける。しなりが足りないシャフトだと、ヘッドが走らずボールに力が伝わりにくい
「ヘッドスピードが速いから硬いシャフト」という単純な図式にならないのは、このためです。ヘッドスピードが同じ2人でも、しなり戻りのタイミングが違えば、合うシャフトはまったく別のものになります。
そして重要なのは、この動き方が簡単には変わらないということです。豊橋店の今泉さんも「合わないシャフトは、一生合わない」と表現していましたが、人の体の動かし方は指紋のようなもので、練習で多少変わっても、根本の傾向は残り続けます。だからこそ、その傾向を先に見極めてから道具を選ぶ意味があります。

もうひとつの軸:フェースの返り方(ローテーション)

しなり戻りのタイミングと並んで、北川さんが見ているのがローテーション——つまり、スイング中にフェースがどう開いて、どう閉じてくるかという動きです。
シャフトの挙動を追っていくと、単にしなりの大小だけでなく、ねじれを含めた立体的な動きが見えてきます。そこから、その人がどうやってフェースをターンさせているのかが読み取れるのだといいます。
フェースを積極的に返していくタイプの人に、ねじれの少ない(ロートルクの)シャフトを渡すと、返しきれずに右へ抜けることがあります。逆に、体の回転でフェースの向きを揃えていくタイプの人に、よくねじれるシャフトを渡すと、今度は左へつかまりすぎてしまう。
しなり戻りのタイミングと、ローテーションの仕方。この2つの組み合わせでスイングのタイプを判定し、そこからシャフトのタイプとヘッドのタイプを選んでいく——これが、北川さんがヤマハ時代から一貫して使ってきた選定のロジックです。
弾道が「なんとなく右に出る」「なんとなく左に行く」という状態は、多くの場合この掛け合わせのどこかがズレています。
ドライバーからアイアンまで、同じシャフトで揃えればいいわけではない
シャフト選びでよくある思い込みが、もうひとつあります。
「ドライバーからアイアンまで、同じシリーズのシャフトで統一したほうがいいのでは」という考え方です。見た目にも揃いますし、振り感も統一されそうに思えます。
しかし北川さんによれば、セット全体を同じシャフトで揃えることが必ずしも正解ではありません。
理由はシンプルで、クラブごとに求められる役割が違うからです。ドライバーは飛距離と方向性、フェアウェイウッドは地面から上げること、アイアンは狙った距離を正確に刻むこと。長さも重さも役割も違うクラブに、同じ性格のシャフトを入れれば、どこかの番手だけが極端に振りにくくなることがあります。
大切なのは、番手が変わっていくときに振り感がなだらかにつながっていることです。この設計を「フロー」と呼びます。
「ドライバーだけどうしても合わない」「ロングアイアンだけ極端に苦手」——そういった悩みは、スイングの問題ではなく、セット全体のフローが途切れていることが原因である場合があります。単品で最適なシャフトを選ぶことと、セットとして最適なフローを組むことは、別の作業なのです。
「差し加減」で構えたときの顔が変わる

ここからは、少し組み立て側の話になります。
シャフトをヘッドに挿す作業は、一見すると「まっすぐ挿すだけ」に見えます。実際、基本はまっすぐ挿します。ただ、ツアーの現場ではもう一段階細かい調整が行われることがあります。
「シャフトをヘッドに対して少し右目から挿すと、フェースアングルは開き気味になります」
わずかに挿す向きを変えるだけで、構えたときのフェースの向きが変わる。逆向きに挿せば閉じ気味になり、アップライト方向に入れることもできる。ヘッドを削ったりロフトを曲げたりせずに、構えたときの「顔」だけを微調整できる技術です。
こうした細部は、カタログのスペック表には一切現れません。同じヘッドと同じシャフトの組み合わせでも、組み手によって仕上がりが変わるのは、こういう積み重ねがあるからです。
なお、こうした調整は繊細な見極めを伴う作業のため、ご自身で試されることはおすすめしていません。気になる場合は、工房で現物を見せていただくのが確実です。
その見立てをしているのは、どういう人なのか

ここまで紹介してきた見立ての基準は、北川さんが長年の現場で積み上げてきたものです。
北川さんは30歳を過ぎてからゴルフ業界に入り、大阪でレッスンの仕事をしていました。その勤務先に工房ができたことをきっかけに、1年半にわたってリシャフト、新品の組み立て、グリップ交換、ライ角調整を教わります。ここが、クラブを触る仕事の出発点でした。
その後、ヤマハのフィッティングサービス「YPAS(ヤマハ・プロカスタム・アナライジング・システム、通称ワイパス)」を約18年担当します。全国を回るフィッティングバスで測定を行い、その場でクラブを組んでお渡しするところまでを一貫して担当するという仕事です。バスは1台から2台に増え、組み手が足りない時期には1シーズン組み立て専任に回ったこともありました。組み立て本数は、年間1,000本規模に及びます。
測定して終わりではなく、測定結果を自分の手でクラブの形にするところまでやる。この経験の積み方は、フィッティング専門でもなく、組み立て専門でもない、独特のものです。
「こういう機械があったらいいのに」を、形にしてもらった話
もうひとつ、北川さんの経歴で印象に残っている話があります。
フィッティングをしていると、シャフトがスイング中に実際どう動いているのかを、その場で見たくなる場面が出てきます。当時はまだ、それを手軽に確かめる方法が一般的ではありませんでした。
「15年前に、僕が『こういうのがあったらな』と開発に話をして作ってもらったものです」
北川さんの相談から生まれたその機械は、シャフトのしなりを複数の箇所で計測し、スイングの動画と並べて見られるものだったといいます。そこからスイングのタイプを判定し、シャフトとヘッドを選んでいく。この記事の前半で紹介した「しなり戻りのタイミング」と「ローテーション」という2つの軸は、こうした環境のなかで磨かれてきたものです。
必要な道具が世の中になければ、作れないかを相談してみる。この発想の持ち方自体は、四ツ池の工房に移った今も変わっていません。
その後、ヤマハがゴルフ用品事業を終えたことにともない、YPASの活動も区切りを迎えました。北川さんが四ツ池の工房に立っているのは、その先の話です。
弾道は、99打席すべてに残っている
ここまで読んで、「結局、専用の測定器がないと分からないのでは」と思われたかもしれません。
たしかに、シャフトそのものの動きをセンサーで測る機器は、四ツ池の工房にはありません。ですが、シャフト選びで最終的に確かめたいのは、シャフトがどう動いたかではなく、その結果として球がどう飛んだかです。そして四ツ池では、その結果のほうが全打席に残ります。
四ツ池ゴルフガーデンの練習場には、トップトレーサー・レンジが全99打席に導入されています。しかも追加料金はかかりません。打った球の軌跡がそのまま画面に描かれ、キャリーとトータルの飛距離、ボールの初速、そして狙いに対してどれだけ曲がったかが、一球ごとに数値として残っていきます。
これは、シャフト選びの現場ではかなり強力です。
- 候補のシャフトを2本用意して、交互に打ち比べる。感覚では「なんとなくこっち」でも、10球ずつの弾道を並べると、ばらつきの幅がはっきり違うことがある
- 「なんとなく右に出る」という曖昧な悩みが、「7球中5球が右に10ヤード」という具体的な事実に変わる
- 調整の前と後で、同じ数値を並べて比べられる
長年、測定データと実際のスイング、そして組み上がったクラブの結果を突き合わせ続けてきた北川さんにとって、弾道は結論そのものではなく、そこから遡って原因を読むための入り口です。
「測定機がなくても、実際に打っている姿を見たり、クラブを見せてもらえれば、言えることはいっぱい出てきます」
振っている姿を見る。弾道の傾向を見る。今使っているクラブのソールの傷や、グリップの減り方を見る。どの番手で困っているかを聞く。そこから絞り込んでいける範囲は、思っているよりずっと広いのです。
そのうえで、「これは実際に何球か打ってみないと分かりません」という線引きも、その場ではっきりお伝えします。分からないことを分かるふりで進めないことは、道具を預かる仕事の前提だと考えています。
スイングを見ているコーチが、同じ場所にいる
もうひとつ、四ツ池ならではの条件があります。
クラブの悩みとスイングの悩みは、本来切り離せません。「右に出るのはクラブのせいなのか、振り方のせいなのか」——この問いに答えるには、道具を見る人とスイングを見る人の両方が必要です。
ところが多くの場合、この2つは別々の場所にあります。レッスンはスクールで受け、クラブはショップで買う。それぞれの担当者が、お互いの見立てを知らないまま話をすることになります。
四ツ池ゴルフガーデンには、練習場、ゴルフスクール、ゴルフパートナー、そして工房が同じ敷地にあります。スイングを継続的に見ているコーチと、クラブを組んでいるクラフトマンが、同じ場所にいるということです。
レッスンを受けている方であれば、コーチに指摘されている内容を踏まえたうえで、道具側の相談ができます。逆に、工房で見つかったクラブ側の問題を、レッスンの場に持ち帰ることもできます。たとえばスクールではライ角ボードを使う機会が多いため、そこで出た結果をそのまま工房での調整につなげる、といった流れも自然に生まれます。
「振り方を直すべきなのか、道具を替えるべきなのか」。この判断を、両方を見られる場所で一度にできることは、思っている以上に大きな違いです。
打って、直して、もう一度打てる

シャフト選びで一番もどかしいのは、「打ってみないと分からないのに、打つ場所と直す場所が離れている」ことです。試打して、違和感を持ち帰って、後日また相談して——という往復のあいだに、あの感覚は薄れていきます。
四ツ池では、打つ、数値で確かめる、相談する、調整する、また打つ、という流れがその場で完結します。ライ角を少し変えてもう一度打ってみる。グリップの太さを変えて握り比べてみる。そうした細かい確認を、感覚が鮮明なうちに繰り返せます。
さらに、工房はゴルフパートナーの店内から続く場所にあり、中古クラブの在庫も豊富です。いま持っているクラブを調整するのがいいのか、それとも別のヘッドに替えたほうが早いのか。両方の選択肢を並べて比べられるのは、練習場と店舗と工房が同じ場所にあるからこそです。
測定機の有無よりも、この「試して、直して、また試せる」環境のほうが、シャフト選びには効いてきます。 北川さんが提案できる幅が広がっているのは、この場所にいるからです。
なお、北川さんが工房に入る曜日は限られています。じっくり相談されたい場合は、事前にお電話でご都合を確認いただくと確実です。
❓ よくある質問
Q. メーカー純正のシャフトのままでは、やはり物足りないのでしょうか?
A. そんなことはありません。純正シャフトは、幅広い層に合うよう平均的な設計になっているため、その平均に近い方にとっては十分に良い選択です。問題になるのは、しなり戻りのタイミングやローテーションの傾向が平均から離れている場合です。純正で不満がないのであれば、無理に替える必要はありません。
Q. シャフトの動きを測る機器がなくても、合うシャフトは分かるものなのでしょうか?
A. 候補を絞り込む作業は、打っている姿と現在のクラブを見ることでかなりの精度でできます。そのうえで四ツ池では、トップトレーサー・レンジで実際の弾道を数値と軌跡で確認できるため、候補を打ち比べて結果を並べるところまでその場で行えます。感覚と数値の両方で確かめてから決めていただく形です。
Q. ドライバーとアイアンで、シャフトのメーカーはバラバラでもいいのですか?
A. 構いません。大切なのはメーカーを揃えることではなく、番手が変わったときに振り感がなだらかにつながっていることです。結果として別メーカーの組み合わせになることは珍しくありません。
Q. シャフトを替えると、球筋はどのくらい変わりますか?
A. 変わり方には個人差がありますが、方向性のばらつきや、番手ごとの振りにくさは比較的わかりやすく変化します。一方で、飛距離が必ず伸びると約束できるものではありません。事前にどう変わる見込みかをお伝えし、想定と違った場合の対処もあわせてご説明したうえで作業に入ります。
まとめ:シャフト選びは、消去法ではなく逆算で
シャフト選びは、「今がSだから次もS」という消去法になりがちです。ですが本来は、自分のスイングがどう動いているかを先に見て、そこから逆算していく作業です。
- しなり戻りは早いのか、遅いのか
- フェースはどう返しているのか
- セット全体で、振り感はつながっているか
この3つが見えてくると、候補は自然に絞られていきます。
「道具のところが変われば、ゴルフの結果は変わる。それは実際、かなり大きい」
北川さんがそう言い切る一方で、こうも話しています。
「『腕だから』『自分のレベルなら道具は関係ない』と思っている方がすごく多いんです」
道具を替える前に腕を上げなければいけない、と考える必要はありません。買い替えるよりも、いま持っているクラブを調整するほうが費用を抑えられるケースも多くあります。
「シャフトを替えてみたいけれど、何から考えればいいか分からない」——その状態のままで大丈夫です。まずは今お使いのクラブを持って、工房までお越しください。
🏌️ ゴルフパートナー工房のお問い合わせ先
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| ゴルフパートナー四ツ池ゴルフガーデン店 | TEL 053-482-7877 / Google Map / Instagram |
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